全国各地で多くの方にお会いすると、「私がよく行くお店の店主は、京都芸術大学の卒業生と言っていました」「私の使っているこの商品、貴学の卒業生の方の作品です」とご紹介いただくことが多々あります。私たちが知っているお店もあれば、「えっ!?そんなところで」と思わぬ出会いに嬉しくなることもあります。

この度の「開学40周年事業」の目的は、卒業生の皆さんの活動を可視化することにより、新たなつながりを創出することです。そこで全国各地で活動されている卒業生の取り組みをお伝えしたいと考えて生まれたのが、この「卒業生のいるお店」のWEBサイトです。

お届けしたいものは商品自体の魅力はもちろんですが、その卒業生の方の想いや考え、出会いなどの物語です。「いいな」と思われたら是非そのお店に行ったり、コンタクトをとってみてください。そこから新たな「つながり」が生まれることを期待しています。

卒業生の情報を教えてください。

「卒業生のいるお店」では、これからも京都芸術大学(旧校名:京都造形芸術大学)・京都芸術短期大学 卒業生の活動を随時発信していきます。自薦・他薦問いません。

■メールのタイトル
「卒業生のいるお店の紹介」と記載

■本文
・紹介したい卒業生のお名前、活動内容、活動場所、連絡先(電話やメール等)
・紹介者(メール送付者)のお名前、連絡先

京都府

人の持つ「美しさ」を引き出す
似顔絵とジュエリー

川井 達也・笑達さん(& NIGAOE 代表)2005年 情報デザイン学科 卒業
川井 有紗さん(e.n.s 代表)2005年 環境デザイン学科 卒業

京都市南区。東寺のすぐ近くの路地に足を踏み入れると、町家を改修したアトリエ(兼ショップ)「&NIGAOE」「e.n.s」はあります。そのアトリエを営むのは、笑達さんと川井有紗さんご夫妻。
共にバスケットボール部に所属していた学生時代、先輩の誘いをきっかけに始めた路上での似顔絵描き。「今見返すと、当時の似顔絵は下手すぎて(笑)でも、路上で描いていると普段出会わない人との出会いや、その人が見せる表情に興味が湧いたんです」。プレゼントするつもりで描いた似顔絵に、「それじゃ悪いから希望の値段をつけて」と言われて、笑達さんが初めて手にした1枚100円。そこから学生時代の週末は、街に出て似顔絵描きに明け暮れる日々。その様子を隣で見ていた有紗さんもいつしか一緒に似顔絵を描くようになりました。卒業を前にバスケ部の先輩が起業した会社に似顔絵事業部が立ち上がることになり、共に入社。2人からスタートした事業部も、数年の間に依頼の増加とともに10倍以上のスタッフを抱える組織に。
「どんどんスピード感が増していって忙しくなり、本当の自分とやっていることの間にギャップを感じ始めて、まったく手が動かなくなったんです」その迷いの中、先に退職を決意した有紗さんは、自分の時間との向き合い方を見つめ直す日々の中で、植物や自然物の美しさに改めて気づいたと言います。「植物って、こうでなければいけないと縛られるものもなく、ただ生きているだけで美しい。そうやって、見つけたものを拾って集めるようになったんです」本物の植物を身につけることで、自分もそこから何かを得られるのではと、有紗さんのジュエリー制作は始まります。「自然物はそのままで完璧に美しい。だから、その美しさを伝えたいし、活かしたものを作りたいと思っています」
一方、「どれだけの人を描くことができるか。一生似顔絵を描いていこう」と決意した笑達さんもマネジメントの責任ある立場と、一作家としてもっと多くの人と向き合いたいという想いの葛藤の中、独立を決意。「最初は描いた人が喜んでくれるのが嬉しかったんです。そこから少しずつ自分は人のどういう部分を描きたいのかを自問自答するようになっていきました」似顔絵で描いているものは、笑達さんが見たその人の美しさ。「直接会って話を聴いていく中で、その人の良い表情が重なっていく。輪郭があるような、ないような、その重なりの一番濃い部分を描いているのかもしれません」
「自分が見つけて拾ってくるものは、そのときの自分をいつも映し出している」と語る有紗さん。「人の似顔絵を描くことで、輪郭として自分を描いているのかも」と話す笑達さん。表現は異なっても、目の前の人やモノから美しさを見出し、自分と向き合う姿勢は、ご夫妻に共通している魅力でした。

text:吉田大作/photo:CHIMASKI/September, 2016

  • 町家を改修したアトリエ兼ショップ。

  • 自然物はそのままで美しい。その美しさを身につけるジュエリー。
    素材は木の実、種、お豆です。

  • 鉱石の価値は人が決めている。一方で、どこにでも美しいものは存在している。
    写真のジュエリーの素材は鉱石、石ころ、貝殻のかけらなど。

  • 手紡ぎ糸などを使って手編みで編んだもの。
    「昔の人が生活の中で必要なものを何でも自分で作ったようなモノづくりを目指したい」

  • その人の感覚に正直な、「生きていること」を表現できるジュエリー

  • 「一生似顔絵を描いていく」決意。

  • 直接対面し、話を聴きながら、笑達さんが見たその人の美しさを描く。

  • これまで描いた似顔絵は3 万人以上。この先もどれだけの人を描けるか。

  • 「似顔絵はその人の持つ良い表情の重なりが一番濃い部分だと思う」

  • ジュエリーと似顔絵。表現は違っても、「自分と向き合うこと」は同じ。

お店について

& NIGAOE / e.n.s

〒601-8473 京都市南区九条町411-2
TEL 075-202-4960
定休日 不定休 ※ご来店希望の方は事前にお問い合わせください。

& NIGAOE http://and-nigaoe.jp/
Kawai Arisa http://kawai-arisa.jp/

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卒業生の紹介

川井 達也・笑達(かわい たつや・しょうたつ)

1982年、和歌山県生まれ。京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業。大学生のときから似顔絵を描きはじめ、卒業後は「いろは出版株式会社」に就職。似顔絵作家集団「WORLD 1」を立ち上げる。2012年「& NIGAOE」として独立。似顔絵作家「笑達」として。全国各地で似顔絵制作、個展をして活動。現在までに描いた人数は3万人以上。オイルパステルを使い、目の前の人の存在と魅力をそのまま似顔絵に描く。

川井 有紗(かわい ありさ)

1982年、広島県生まれ。京都造形芸術大学環境デザイン学科卒業。2009年より、植物を使ったジュエリーを制作。現在では植物に限らず、海や山で出会う漂流物、貝殻、鉱物など自然素材を中心に作品制作。年に数回の個展を開催。2012年京都にアトリエ兼ショップ「e.n.s]をオープン。直接お話を伺って、オーダーメイドでのヘッドドレス、ウェディングブーケの制作、ウェディングブーケからのジュエリーやオブジェも制作している。

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