大好きな人の笑顔を、おばあちゃんになるまで
加藤 麻希さん(oiwai カメラマン)
2002 年 デザイン学科 情報デザインコース卒業
「おばあちゃんになるまで おいわいしたい」というコンセプトのもと、加藤麻希さん(京都造形芸術大学卒)と戸田麻子さん(多摩美術大学卒)の二人で立ち上げたプライベートフォトを専門としたユニット "oiwai"。 共に同じ広告制作会社で働いていたことが縁で知り合い、お互いに撮りたい写真や感性に共感するものがあって、"oiwai" は誕生しました。女性フォトグラファーならではの、優しくあたたかい目線で、結婚式やマタニティーフォト、七五三といった家族の大切な節目をオーダーメイドで撮影されています。
「大学時代は写真を仕事にしようと思っておらず、あくまで表現手段のひとつとして考えていました」。加藤さんが大学を卒業するときは就職氷河期真っ只中。当時、自分が就きたい仕事も決まっていなかったため、就職はせず、一旦実家の三重県にもどられました。ただ、定職に就かない日々は時間だけは余裕があったため、「一冊の写真集」を作ることを目標として、アジア放浪の旅に出ることに。その旅の途中、何か目的を持って撮影するわけではなく、ほんとうに自分の好きなものだけを撮っているうちに、自分はこれからカメラマンとして生きていくことが最良の道であると実感したそうです。
帰国後は夜間の写真学校に 2 年間通い、25 歳の時に東京の広告制作会社に就職。アシスタントからスタートし、インテリアや料理・人物撮影など、さまざまなプロカメラマンの仕事を間近に見ることによって、撮影技術の多くを習得されました。しかし一方で職人的に撮影案件をこなす毎日に疑問を感じるようになったそうです。
相手のことを良く知らずに、与えられた仕事をこなしていくだけでは満足できず、「自分が本当に納得できるものを撮りたい」と思い、"oiwai" を立ち上げました。現在は被写体となる方と向き合ってコミュニケーションをとったうえで、それぞれの思いに寄り添ったプラン・ロケーションを提案するスタイルで撮影を続けておられます。
「これからもマイペースに、おばあちゃんになるまでずーっと、大好きな人が笑っているところを、写真に撮っていけたらいいなと思っています」
"oiwai" の二人は自分たちの価値観を大切にし、いつか、誰かにとって「宝物の一枚」を残すために今日もさまざまな場所を訪れます。
加藤さんがこれまで撮影されてきた写真。
「写真ってあとで見返した時に、何気ない普段の姿が幸せだったことに気づくことができるんです」加藤さんは、そんな誰かの心の支えになる写真を撮り続けたいという。- photo: 加藤麻希
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「父親が病で倒れて、お母さんがふさぎ込んでしまったんです」そんな状況のなか病室で加藤さんが撮影した両親の写真。はじめは撮られることを嫌がっていたそうですが、この撮影をきっかけに、気持ちが前向きになっていったのだそうです。
今回は加藤さんの大学の先輩である仲西さんのご自宅で行われている撮影を取材しました。
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撮影の時は「まずは安心してもらう」ことを大切にしているそうです。家族写真は結婚式、出産、七五三とずっと撮り続けることによって家族との距離が近づき、家族の成長を見ることもこの仕事の醍醐味だという。
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今回の取材中、サプライズで仲西さんの手料理をごちそうになりました。2 時間程度の撮影予定が、丸半日さまざまな思い出話や子育ての話などで盛り上がりました。加藤さんは学生時代から、友人たちの「オカン的存在」として、いつもみんなの輪の中心にいたそうで、本当に楽しそうに仲西さんの話を聞く加藤さんが印象的でした。
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下の写真は加藤さんが撮影した仲西さんご家族の写真。仲西さんのご家族をお子さんの成長とともに定期的に撮影されています。「スタジオで撮るのもいいけれど、生活しているありのままの空間で撮ることを大切にしています」加藤さんは、そこにある家具や植物など、暮らしぶりを含めて記憶に留める写真をできるだけ撮りたいのだといいます。
- photo: 加藤麻希
text:曽田源/photo:CHIMASKI/May,2017
加藤 麻希(かとう まき)
三重県生まれ。2002 年 京都造形芸術大学 デザイン学科 情報デザインコース卒業。
2005 年 ササキスタジオ入社。2009 年フリーランスとして独立。
現在はプライベートフォトグラファーとして活動し、結婚式やマタニティーフォト、七五三といった家族写真を中心に、さまざまな撮影案件に対応している。
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