全国各地で多くの方にお会いすると、「私がよく行くお店の店主は、京都造形芸大の卒業生と言っていました」「私の使っているこの商品、貴学の卒業生の方の作品です」とご紹介いただくことが多々あります。私たちが知っているお店もあれば、「えっ!?そんなところで」と思わぬ出会いに嬉しくなることもあります。

この度の「開学40周年事業」の目的は、卒業生の皆さんの活動を可視化することにより、新たなつながりを創出することです。そこで全国各地で活動されている卒業生の取り組みをお伝えしたいと考えて生まれたのが、この「卒業生のいるお店」のWEBサイトです。

お届けしたいものは商品自体の魅力はもちろんですが、その卒業生の方の想いや考え、出会いなどの物語です。「いいな」と思われたら是非そのお店に行ったり、コンタクトをとってみてください。そこから新たな「つながり」が生まれることを期待しています。

京都造形芸術大学 事務局長 吉田大作

卒業生の情報を教えてください。

「卒業生のいるお店」では、これからも京都造形芸術大学・京都芸術短期大学 卒業生の活動を随時発信していきます。自薦・他薦問いません。

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東京都

子ども心をくすぐる創作の時間

しげおか のぶこさん(造形あそび作家・トイデザイナー)
2000年 京都芸術短期大学 インテリアデザインコース卒業
2002年 京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科 空間デザインコース卒業

東京・代々木にある「かぞくのアトリエ」。ここで、しげおかさんは定期的に親子教室のアートクラスの講師を担当しています。
この日は、2歳児クラス向けに「はっぱびじゅつかん」というテーマの講座。カエデの葉や園庭で拾ったキウイの葉など、用意された多種類の葉っぱの中から子どもたちはお気に入りを選び、思い思いに筆で好きな色の絵の具をのせていきます。しげおかさんは「初めて絵の具に触れる子も多いので、どうなるかわからない。でも、それも楽しんで過ごしてもらえればと思います」と笑顔で優しく話してくれました。
大学時代にインテリアデザインを専攻していたしげおかさん。制作の際のテーマは気づくと「こどもとあそび」に。イスとテーブルにアルファベットのマグネットをくっつけて楽しめる作品や、切断した塩ビパイプを並べ、差し込んだ光から写される影を見て楽しむ作品など、今思えば自分では「何でこんなもの作ったんだろう?」と不思議に感じる作品ばかりだそうですが、当時を振り返るしげおかさんの様子は楽しげです。子どものような豊かな感性を持っているしげおかさん。講座でもその様子が伺えました。子どもたちが描く絵のひとつひとつに興味をもって優しく丁寧に働きかけることで、「安心して楽しんでほしい」という気持ちを伝えます。次第に参加者の緊張感も解けはじめ、のびのびとした創作の時間が始まりました。

  • 「普通なら白い画用紙に絵を書くけれど、あえて葉っぱに書くことを提案して“こんな使い方もありなんだ!”ということを、子どもたちはもちろん、お母さんたちにも伝えたい」というしげおかさん。そこには、普段の生活の中で触れる素材をいつもとは違う方法で使うことで、子どもの感性が豊かになるというアイデア、そして、そのことをお母さんたちにも実感してもらいたいという、しげおかさんの優しさが込められています。

  • 完成した作品にそれぞれ名前が付けられました。タイトルは創作時間の中で子どもの発した言葉や様子を見て、お母さんが感じ取った“子どもの想い” を表してます。同じ素材を使っていても仕上がりは一点もの。親子で作る、世界にひとつの作品にしげおかさんは「成長の記録として振り返れるように大切にしてほしい」 と言います。

  • 制作の後は、全員で鑑賞会。最初は子どもたちの初体験に緊張していたお母さんも、鑑賞会の時間になると、「かわいい絵だね」「色づかいが素敵だね」など、会話を通じてそれぞれの作品の感想を伝え合っておられました。しげおかさんが「みんなでつくる」ということを大切にされているのは、一人では気づかない「発見」を参加者と一緒に感じあうためです。同じ創作の時間を共有することで育まれる、“仲間” や“友達” といった関係性も子どもたちの日常に刺激を与えてくれます。

  • 「うちの子は、最初は葉っぱに触れるのも嫌がっていたのに、時間が経つうちに、絵の具の感触や葉っぱにも興味を持っていって。顔についた絵の具を真似っこで私にもつけてきたんです。家では汚れるから絵の具を避けていたけど、今日は思いっきり楽しめました」と話してくれたお母さんもいました。
    「初めての体験に緊張していたお母さんたちも、最後は一緒になって楽しむ。それが子ども達の安心感に繋がって、創作の時間がいいものになっていく」というしげおかさんの想いが伝わった瞬間でした。

  • 「かぞくのアトリエ」はしげおかさんが講座を定期的に行なう場所。ここで沢山の親子と一緒に創作の時間を過ごしてきました。施設の中にはワークショップで作った作品の数々が展示されています。

  • これは今年の5月に実施した講座での作品。
    ボールに絵の具を浸し、子どもたちみんなが紙に転がしてできたもの。意図しない偶然が作りだす作品からは力強さやダイナミックさを感じられます。

  • しげおかさんは大学卒業後、一度おもちゃの会社に就職。そこで出会った同僚とともに木製おもちゃのブランドgg* を立ち上げました。この「tsumiki」は、カラカラと音が鳴るパーツや、マグネットがついているパーツがあるので、ひっつけて遊ぶこともできます。家の形をしたケースに、パズルのように積み木がはめられるようになっていて「遊んだ後も、楽しく片付けができるように」というあそび心が詰まっています。

  • これは「step to the world」という、かるたの知育おもちゃ。国旗が描かれた絵の裏には、それぞれの母 国語での挨拶が書かれています。
    子どもたちに「世界にはいろんな言葉があるんだ、いろんな国があるんだ」ということに興味を持ってもらうきっかけになってほしい、という思いからこのおもちゃが生まれました。文字が読めなくても絵合わせで楽しめるおもちゃに子ども達も興味津々です。
    今回の取材で見えてきたのは、子どものような純粋な気持ちを持ちながら日々の生活にある何気ない発見や気づきに感動する、しげおかさんの姿でした。これからもしげおかさんのテーマである「こどもとあそび」への探究は続きます。

text:木村郁花/ photo:CHIMASKI/ December,2017

お店について

STUDIO pippi

今回の取材で使用した施設、渋谷区こども・親子支援センター「かぞくのアトリエ」(http://kazoku-no-atelier.com)など、東京を拠点にワークショップを定期的に開催。Instagram では日々、あそびのアイデアやイベント情報を更新中。
E-mail 
Instagram https://www.instagram.com/studiopippi/?ref=badge
http://studio-pippi.com/
「gg*」http://gg-kids.com

卒業生の紹介

しげおか のぶこ
1980年、和歌山県生まれ、愛知県育ち。2002年京都造形芸術大学空間デザインコース卒業。大学卒業後は玩具メーカーで企画デザイナーとして勤務。その後、2007年に木のおもちゃブランド「gg*」を塩見和代さんと立ち上げ、2011年には自身の活動「STUDIO pippi」をスタート。現在は「gg*」デザイナーとして活動しながら、KIDS DESIGN&PLAYTHING をテーマに企業の玩具、教材などのデザインをはじめ、こども向けワークショップ『こどもじっけんしつ』を通して楽しいものづくりやあそびを提案している。

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