全国各地で多くの方にお会いすると、「私がよく行くお店の店主は、京都芸術大学の卒業生と言っていました」「私の使っているこの商品、貴学の卒業生の方の作品です」とご紹介いただくことが多々あります。私たちが知っているお店もあれば、「えっ!?そんなところで」と思わぬ出会いに嬉しくなることもあります。

この度の「開学40周年事業」の目的は、卒業生の皆さんの活動を可視化することにより、新たなつながりを創出することです。そこで全国各地で活動されている卒業生の取り組みをお伝えしたいと考えて生まれたのが、この「卒業生のいるお店」のWEBサイトです。

お届けしたいものは商品自体の魅力はもちろんですが、その卒業生の方の想いや考え、出会いなどの物語です。「いいな」と思われたら是非そのお店に行ったり、コンタクトをとってみてください。そこから新たな「つながり」が生まれることを期待しています。

卒業生の情報を教えてください。

「卒業生のいるお店」では、これからも京都芸術大学(旧校名:京都造形芸術大学)・京都芸術短期大学 卒業生の活動を随時発信していきます。自薦・他薦問いません。

■メールのタイトル
「卒業生のいるお店の紹介」と記載

■本文
・紹介したい卒業生のお名前、活動内容、活動場所、連絡先(電話やメール等)
・紹介者(メール送付者)のお名前、連絡先

東京都

一つひとつの花に、着る人への想いを込めて

水口 真奈さん(手描染 眞水 作家)
2000年 京都造形芸術大学 日本画コース卒業

蓮、朝顔、マリーゴールド、ノウゼンカズラ、檸檬、ゴールデンシャワー、オリーブ……
「手描染 眞水」の水口さんがつくるTシャツやワンピースには、色々な植物がのびのびと可憐に描かれています。その商品すべてが水口さんの手描き。散歩の途中や植物園に出向いてスケッチした植物をもとに構図やデザインを考え、洋服をキャンバスにして描いています。
大学では日本画を専攻していた水口さん。授業の課題で何度か花を描くことはあったけれど、得意ではなかったそう。「綺麗なものを綺麗に描くことよりも、“自分らしさ” を追究することに必死だった」と学生時代を振り返っておられました。そんな水口さんが花を描くようになったのは、自分のTシャツに絵を描いて、お気に入りの1着を作ったのがきっかけ。以降は手作り市や個展に出品し、そこで出会ったお客様や作家仲間からのアドバイスを取り入れながら、制作を続けてきました。活動を始めて15年経った今もお店は構えず、全国各地の個展会場で出会う方々との対話を大切にしながら、作品を販売する方法を中心にしています。また、活動を始めた当時からの“自分が楽しんで描くからこそ、着る人にもワクワクする気持ちが伝わる” という制作に対する姿勢は変わっていません。

  • 自分のためにと描いた1着目のTシャツの柄は“蓮”。それからずっと描き続けている植物の1つで、実際に自宅で育てながら細かい変化をスケッチし、題材にするほど。この仕事を始めるきっかけとなった、思い入れの強い大切な花なのだそうです。

  • 個展会場を取材中、10年以上前から「眞水」のファンだという女性のお客様と出会いました。
    近くで個展があるという案内ハガキが届くと、時間を見つけて必ず足を運ぶのだそう。どんなデザインが増えているか、水口さんの作風や表現力がどの様に変化しているか、毎回楽しみにしているのだとお話しくださいました。今回は「深みのある青い色と、すぅーっとしなやかに伸びた線がきれい」だという、竹が描かれたワンピースを購入されていました。

  • 私が購入したマリーゴールドのTシャツ。首元に大きく描かれた鮮やかなオレンジ色の花と、葉の緑色の濃淡がとても綺麗で気に入っています。着るたびに、明るく楽しい気分になります。

  • 自宅の部屋の一画で、家事と3歳のお子さんの育児を両立しながら制作に取り組んでいる水口さん。絵を描く際は、きっと時間が経つのも忘れるくらい集中して取り組んでいるのだろうと想像していましたが、水口さんは「できる時に、できるところまで」と無理をしないようにしているそう。家事やお子さんとの時間を大切にしながら、自分の一番心地良いペースで制作に取り組むことで、「いつも描く時間が待ち通しく、ワクワクした気持ちで筆を持つことができる」のだと教えてくださいました。そんな自然体の水口さんだからこそ、見た人をほっこりと温かい気持ちにさせる花を描くことができるのだろうと感じました。

  • 水口さんは、お客様が商品を購入される前には必ず試着をお勧めし、お客様と一緒に鏡の前で感想を伝えるようにしています。
    「新しい柄を考える時、私は制作スペースと鏡の前を何度も行き来します。描いて着てを繰り返しながら、自分が一番美しいと思える花の位置や大きさ、色味などを細かく決めていくんです。でも最終的に着るお客様の顔立ちや体型・雰囲気などによって、私が想像していた服とは全然違った表情になることも良くあります。なので、お客様と一緒に、その方に一番似合うお気に入りの1着を選ぶお手伝いができたらと思っています。」

  • 水口さんが描いた服は、お客様が着ることによって完成します。どんな人がこの服を着るのか、この服を来てどんな場所に出かけ、どれだけ多くの素敵な思い出を服と一緒に刻んでいくのか。
    そんなことを想像しながら、水口さんはこれからもワクワクした気持ちで、たくさんの素敵な花を描いていかれることでしょう。まだ見ぬお客様との出会いを、心待ちにしながら。

text:中西絵里加/photo:CHIMASKI/November,2017

お店について

手描染 眞水

水口さんご自身が着る洋服を作ろうと、Tシャツに花を描いたことがきっかけで始まったお店。実際に見た植物をスケッチし、それをもとに描いているため、季節ごとに商品も異なります。また、1枚ずつ時間をかけて手で描くため、花の模様もすべて表情が異なり、お気に入りの1枚を選ぶために多くの方が水口さんの商品が購入できる個展に訪れます。
http://mamizu.net/

卒業生の紹介

水口 真奈(みずぐち まな)
1978年京都府生まれ。京都造形芸術大学日本画コース卒業。卒業後も制作を続け、2002年には京展に入選。
同時期に眞水としての活動を開始し、手作り市や個展で作品を発表。2010年にはNHK『猫のしっぽカエルの手』に出演するなど、制作する商品がメディアで取り上げられるように。現在は東京在住で3歳のお子さんのお母さんとして、家事・育児と両立しながら制作を続けています。

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