全国各地で多くの方にお会いすると、「私がよく行くお店の店主は、京都造形芸大の卒業生と言っていました」「私の使っているこの商品、貴学の卒業生の方の作品です」とご紹介いただくことが多々あります。私たちが知っているお店もあれば、「えっ!?そんなところで」と思わぬ出会いに嬉しくなることもあります。

この度の「開学40周年事業」の目的は、卒業生の皆さんの活動を可視化することにより、新たなつながりを創出することです。そこで全国各地で活動されている卒業生の取り組みをお伝えしたいと考えて生まれたのが、この「卒業生のいるお店」のWEBサイトです。

お届けしたいものは商品自体の魅力はもちろんですが、その卒業生の方の想いや考え、出会いなどの物語です。「いいな」と思われたら是非そのお店に行ったり、コンタクトをとってみてください。そこから新たな「つながり」が生まれることを期待しています。

京都造形芸術大学 事務局長 吉田大作

卒業生の情報を教えてください。

「卒業生のいるお店」では、これからも京都造形芸術大学・京都芸術短期大学 卒業生の活動を随時発信していきます。自薦・他薦問いません。

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・紹介したい卒業生のお名前、活動内容、活動場所、連絡先(電話やメール等)
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岐阜県

木の“個性”を丁寧に見つめた家具づくり

福田 陽平さん(ピネル工房 木工職人)
2000年 京都芸術短期大学 洋画コース卒業
2002年 京都造形芸術大学 美術工芸学科洋画コース卒業

「モノの命は使う人次第。だから、長く大切に使ってもらえるものを作り続けたい。」
周りの人をほっこりとさせる優しい雰囲気の福田さんが、慎重に言葉を選びながら話してくださったその時の力強い眼差しは、とても印象に残っています。
木工で家具や小物、カラトリーなどを製作し販売する「ピネル工房」を営む福田さん。本学の卒業生で在学中に知り合った奥様、そしてお子さんと一緒に暮らす古民家の一部をショールーム「ピネルの家」として開放し、一つひとつ丁寧に作られた商品の数々を展示しています。
洋画コースを卒業した福田さんが木工職人になることを決めたのは、20代前半に旅したヨーロッパでの出来事がきっかけ。そこで目にした、自然や環境と上手くつき合いながら暮らす人々の様子や、偶然知り合った建築業の方から聞いた仕事の話しなどから、木の持つ温かく大らかな魅力に引き込まれ、木工の勉強を始めたそうです。その後、京都の工房での3年間の修行を経て2009年に独立。年輪の模様、太さ、色、質感など、木それぞれが持つ“個性”を丁寧に見つめ、その魅力を最大限に活かすことのできるもの作りに取り組んでいます。

  • 伊吹山の麓に位置する岐阜県神戸町。福田さんが生まれ育った自然豊かなこの町に、「ピネル工房」と「ピネルの家」はあります。

  • 自宅兼ショールーム、「ピネルの家」。ここには福田さんが作った椅子やテーブル、木皿などが置かれています。もともと小中学校時代の同級生が住んでいた家だそうですが、年季が入って味わい深い雰囲気となった柱や窓ガラス、扉はそのまま残し、床や壁を自分たちで張替えて、今の内装にしたそうです。また、お米や野菜などの食材の一部もご自身で育てておられ、無理のない、ゆったりとしたリズムの中で自然と共に暮らす生活をされています。こういった中にも、福田さんの「ものを大切にする優しさ」や「ものそれぞれの魅力を引き出す姿勢」が現れています。

  • 明るく日が差し込む縁側には定番商品の1つ、三脚スツールが。「木の種類、木目の模様などの“個性”によって、同じ形でも全く違う表情になるところがおもしろい」と福田さんは言います。見比べるだけでなく、手で触ったり、腰掛けてみたりしながらその“違い”を楽しみ、自分好みの椅子を探す人も多いそうです。

  • 皿やお椀などの種類も豊富。この器を使って家族みんなで食事をしたら…と、思わず想像を膨らませてしまうほど、他の素材とは違う、木特有のあたたかみが感じられます。

  • 家具などを作った際に出た切れ端も、その形を活かして何か新しいものが作れるのではないかと捨てずに取っているそう。部屋のところどころには、そんな木材からできた置物もさりげなく配置されています。「あっ、こんなところに!」というワクワクが室内にちりばめられていて、福田さんの人柄があらわれた温かい空間になっています。

  • 「ピネルの家」から少し離れたところにある、製作スペースの「ピネル工房」。「ピネルの家」の温かい雰囲気とは異なり、木と真剣に向き合うための、凛とした雰囲気が漂っています。

  • 工房の壁の片隅に置かれた、スプーンや木匙を作った切れ端。福田さんだからこその視点によって“個性”が引き出され、新しい命が吹き込まれていきます。

  • 取材をさせて頂いた時は広島での個展を直前に控え、完成に向けて製作も終盤を迎えていました。そんな忙しい中でも、彫るたびに凸凹や木目の具合を一つひとつ確かめながら丁寧に作業を進めておられ、まるで福田さんが木と会話をしているようにも見えました。

  • 学生時代から、具象的な絵よりも抽象画を描くことの方が得意だったいう福田さん。何を作るかを決めてから作業に入るのではなく、材料(素材)を見て、どうすればそのものの良さを一番に表現することができるのかと試行錯誤することに楽しさを感じるのだと話してくださいました。
    福田さんのもの作りは、時間も手間もかかります。しかし、そこには機械では決して表現することのできない温もり、そして何よりも、木の“個性”を大切にする福田さんの温かく優しい“想い”が刻み込まれています。福田さんと木との対話は、これからもずっと続いていきます。

text:中西絵里加/photo:CHIMASKI/November,2018

お店について

ピネル工房

〒503-2302 岐阜県安八郡神戸町田229-1(ショールーム・ピネルの家)
TEL 0584-51-2955
営業日 毎月第2・第4土曜日
営業時間 11:00~17:00 ※営業日時は変更する場合があります。予めHPをご確認ください。
http://pynel-studio.com/

卒業生の紹介

福田 陽平(ふくた ようへい)
1979年岐阜県生まれ。大学卒業後の20代前半に半年間かけて旅したヨーロッパでの見聞がきっかけで木の魅力に惹かれ、木工職人の道にすすむことに。福田さんの営む「ピネル工房」では、京都の工房での修行を通して学んだ技術や知識を存分に活かし、木の個性が最大限に表現できる“ものづくり”に取り組んでいる。また、個展やイベントへの出展も積極的に行っている。

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