全国各地で多くの方にお会いすると、「私がよく行くお店の店主は、京都芸術大学の卒業生と言っていました」「私の使っているこの商品、貴学の卒業生の方の作品です」とご紹介いただくことが多々あります。私たちが知っているお店もあれば、「えっ!?そんなところで」と思わぬ出会いに嬉しくなることもあります。

この度の「開学40周年事業」の目的は、卒業生の皆さんの活動を可視化することにより、新たなつながりを創出することです。そこで全国各地で活動されている卒業生の取り組みをお伝えしたいと考えて生まれたのが、この「卒業生のいるお店」のWEBサイトです。

お届けしたいものは商品自体の魅力はもちろんですが、その卒業生の方の想いや考え、出会いなどの物語です。「いいな」と思われたら是非そのお店に行ったり、コンタクトをとってみてください。そこから新たな「つながり」が生まれることを期待しています。

卒業生の情報を教えてください。

「卒業生のいるお店」では、これからも京都芸術大学(旧校名:京都造形芸術大学)・京都芸術短期大学 卒業生の活動を随時発信していきます。自薦・他薦問いません。

■メールのタイトル
「卒業生のいるお店の紹介」と記載

■本文
・紹介したい卒業生のお名前、活動内容、活動場所、連絡先(電話やメール等)
・紹介者(メール送付者)のお名前、連絡先

京都府

人を笑顔にするガラスのコップ

ツジウチ ヨウコさん(Subikiawa食器店 本店 コビト会議 店主)
2003年 京都造形芸術大学 情報デザインコース卒業

店内へのドアを開けると目に飛び込んでくる、カラフルな食器たち。
本学からもほど近い、京都市・百万遍にある「Subikiawa食器店 本店 コビト会議」は、一つひとつ手書きで丁寧に絵付けされたガラス食器が並ぶ、見ているだけでもワクワク楽しい気持ちになるお店です。「卓上ノサーカス!」をテーマに制作された食器には、“シトロンさん”と名付けられた「女の子」や「レモン」「かまぼこ」「ネギ」などをモチーフにしたイラスト、「もしもし、」「11回笑う」「右目」「左目」など、思わずその言葉の意味を尋ねたくなる図柄など、ユニークな商品が並んでいます。
絵付けを始めたのは、友人へのプレゼントがきっかけ。欲しいと言っていた「真っ赤なグラス」を探すため、たくさんのお店をまわったそうですが見つからず、だったら自分で作ってしまおうと制作に取り組んだのが始まりでした。試行錯誤の末に完成した作品を友人に手渡した時、予想以上に喜んでくれている姿を見て、自分の作品を通じてもっと多くの人を笑顔にしたいという思いが湧き上がってきたそうです。それからは手作り市などの場に積極的に出品するようになり、お客様の意見やアドバイスを取り入れながら制作を続けてきました。レトロポップで個性的なデザインが人気となり、今では様々な企業からコラボレーション商品の依頼を受けたり、2010年に開いたお店には、全国各地からファンの方々が訪れるようにもなりました。

  • 住宅街の一画にある「Subikiawa食器店 本店 コビト会議」の店舗。周りの建物に馴染みながらもレトロな雰囲気が漂います。お店が開いているのは月5日程度で不定期のため、事前にホームページで開店日時の確認が必要です。

  • 色で溢れる店内の様子。色の組み合わせ方だけでなく、グラスの形とのバランスや相性、それを店内に配置した時の見え方など、一つひとつの作業に強いこだわりを持って制作しているのだそう。ただ単に可愛いと思うものを作るのではなく、常に多角的な視点からものを見るように心がけているのだと話してくれました。

  • 商品を購入されたお客様の中には、実際にグラスを使っている様子をSNSやInstagramに投稿される方もいらっしゃるそうです。同じグラスでも写っている背景や注ぐ飲み物によって随分と雰囲気が違っていたり、小物入れやインテリアの置き物としてなど、本来の用途とは異なる使い方をされていることもあるのだそう。このように、想像していなかった作品の新たな一面を知ることで、自分が制作したものがお客様に使っていただくことでこそ、その作品の魅力が増し、価値が生まれるのだということを実感するそうです。

  • 現在はお店での販売がメインですが、展覧会や百貨店でのイベントなど、全国各地を訪れて作品を展示・販売したことも。どんな会場であっても作品の見せ方には最後までこだわり、それぞれの場所に合わせてセットや小道具を作ったり、照明のあて方を細かく調整するなどの工夫を凝らすようにしていたそうです。
    これほどまで強く見せ方にこだわりを持つようになったのは、大学でのある授業がきっかけだったといいます。その授業を通して、同じ作品を紹介する場合でも、資料を見せる順番や説明文章の組み立て方、発表する場所などの「伝え方」が異なることで、相手に全く異なる印象を与えるということに衝撃を受け、作品を作ることだけでなく、それを丁寧に伝える工夫を行うことの大切さを学んだのだそう。そのことを教わった教員とは今でも、制作に関して意見をもらったり相談をするなどの親交が続いているそうです。

  • これまでに制作したショップカードの数々。お店を訪れ、商品を手にとってくれるお客様にお渡ししているもので定期的に絵柄が変わるため、集めてくださっているお客様もいるそうです。

  • 楽しいこと、ワクワクすることを絶えず考えており、2037年5月10日に自社ビルをオープンさせたいという夢を込めて描いたポスターが店内に。4階建てのビルには食器を販売するお店だけでなく、手がけた食器を使った喫茶店も作りたいという具体的なプランが描かれています。 「本当にできるかどうかはわからないけど、視覚化したり誰かに話すことで、今の気持ちを持ち続け、一歩ずつ前に進んでいけたら。」そう話している時の表情は、少し恥ずかしそうにも見えましたが、改めて決意を固めたというような力強さを感じました。

  • このお店にある商品には、使う人の日常を明るく楽しい気分にさせてくれる「笑顔の種」がたくさん入っています。そして、より多くの場所で更にたくさんの笑顔を生み出すため、今日も開店日に向けて新しい作品が生み出されていきます。

text:中西絵里加/photo:CHIMASKI/April,2018

お店について

Subikiawa食器店 本店 コビト会議

〒606-8302 京都市左京区吉田牛ノ宮町27-20
営業日 不定期 ※HPに営業日時の案内がありますのでご確認ください。
http://subikiawa.petit.cc

卒業生の紹介

ツジウチ ヨウコ(つじうち ようこ)
1980年大阪府生まれ。大学在学中は、作家名「COYOOTE PICTURES」として展示会やコンペに出品するなど、精力的に制作活動に取り組んできた。その後2005年からは「Subikiawa 食器店」として、絵画制作のほか、「卓上ノサーカス!」をテーマとしたガラス食器の絵付け商品の制作も行うようになり、現在は実店舗を構えて活動を続けている。

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