全国各地で多くの方にお会いすると、「私がよく行くお店の店主は、京都造形芸大の卒業生と言っていました」「私の使っているこの商品、貴学の卒業生の方の作品です」とご紹介いただくことが多々あります。私たちが知っているお店もあれば、「えっ!?そんなところで」と思わぬ出会いに嬉しくなることもあります。

この度の「開学40周年事業」の目的は、卒業生の皆さんの活動を可視化することにより、新たなつながりを創出することです。そこで全国各地で活動されている卒業生の取り組みをお伝えしたいと考えて生まれたのが、この「卒業生のいるお店」のWEBサイトです。

お届けしたいものは商品自体の魅力はもちろんですが、その卒業生の方の想いや考え、出会いなどの物語です。「いいな」と思われたら是非そのお店に行ったり、コンタクトをとってみてください。そこから新たな「つながり」が生まれることを期待しています。

京都造形芸術大学 事務局長 吉田大作

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「卒業生のいるお店」では、これからも京都造形芸術大学・京都芸術短期大学 卒業生の活動を随時発信していきます。自薦・他薦問いません。

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広島県

ほっとする、美味しい一杯へのこだわり

名切 弥月さん(イリガン珈琲店 店主)
2014年 京都造形芸術大学 空間演出デザインコース卒業

外の空気もすっかり肌寒く感じるようになってきた10月の終わり。
広島市・横川駅近くに名切さんのお店、「イリガン珈琲店」を訪ねました。2017年6月にオープンしたまだ比較的新しいお店ですが、どこか懐かしい雰囲気の書体で書かれた看板からは、長年この街を見守っている昔からあるお店のように感じられます。
ガラスの扉を開けて店内に入ると、珈琲の良い香りが。思わず大きく息を吸い込むと、ほっと気持ちが落ち着き、思わず笑みがこぼれます。今のお店をオープンさせる以前は、安芸太田町で町おこしを目的にした公園の管理と、敷地内にあったレストランを家族で運営していた名切さん。レストランでの仕事を通して、自分たちが作った料理に対し、お客様がすぐに反応を返してくれるというコミュニケーションの在り方とその場の空気感に魅力を感じ、もともと好きだった珈琲と、当時から人気メニューだったお母様・お姉様が作るカレーを提供するお店を始めることにしたそうです。以来、訪れるお客様がリラックスできるお店づくりを意識し、日々、珈琲の焙煎を研究したり新しいメニューの考案にと、お客様にとって心地いいお店づくりを目指して思考錯誤を続けています。

  • 学生時代から好きだったという珈琲。自分自身も納得のいく美味しい一杯をお客様に提供するため、お店を出すことを決めて以来、独学で勉強を続けています。

  • 名切さんのこだわりは、豆を贅沢に多めに使い、80 度から 85 度の低めの温度で淹れること。 ネルドリップで優しく円を描きながら丁寧にお湯を注ぐと、まるで豆が魔法にかかったかのようにふわりふわりと盛り上がってきます。そうやって抽出された珈琲は香りも豊かで、 コクのあるしっかりとした味わいになります。
    また、お店には常時 4~6 種類の豆が用意されており、濃さも選ぶことができるので、自分の好みやその日の気分に合わせた珈琲を選んで飲むことができるのもこのお店の楽しみ方の一つです。

  • 試作を重ね、開店から約3ヶ月後にメニューに仲間入りをした珈琲ゼリー。今では人気メニューの一つです。ソフトクリームの上には、アクセントとして珈琲の粉が振りかけてあります。写真映えするこのメニューは、放課後や休日にお店を訪れる高校生や若い女性にとても好評なのだそうです。

  • こちらのカレーもお店の看板メニューの1つで、名切さんのお母様が 3 日間かけて丁寧に仕込んだ、野菜の甘みがたっぷりと感じられる一品です。独自にブレンドしたスパイスと、 半日以上かけて炒めたタマネギが味の決め手。お母様の華奢な身体からは想像できないくらい、全身を使って調理をするその後ろ姿からは、名切さんと同様、「お客様に最高の一品を届けたい」という強い願いが感じられます。

  • 入り口の横に置かれた焙煎機。煙と珈琲の香りがお店の周辺にまで拡がるため、毎週月曜が稼働日と決まっています。焙煎作業は豆の種類やその出来、火の強さや煎る時間によって味が全く変わるため、とても集中力と神経を使います。名切さんは開店以来、毎回焙煎記録表をつけて細かい調整を繰り返しながら、納得のいく仕上がりを求めて作業を行っています。
    取材時にお店を訪れていた 60代くらいの男性の常連客の方は、名切さんと出会うまでは、 あまり珈琲が好きではなかったのだそう。丁寧に好みの味を聞いてくれたり、その豆にあった淹れ方を教えてくれたことによって、自分好みの味に出会うことができ、今ではこのお店の大ファンになったのだと笑顔でお話ししてくださいました。

  • 学生時代は芸大に進学したのに絵を描くことが苦手だったため、引け目を感じていたとい う名切さん。しかし、昔から好きだった音楽の知識や技術を活かして仲間と企画をしたイ ベントを盛り上げたり、自分にできることはないかと「工夫する」ことを常に考えていた のだそう。名切さんのお店に高校生から70代くらいまでと非常に幅広い年齢層のお客様が 訪れるのは、そういった、目の前のお客様一人のためにと「工夫する」姿勢を名切さんが 常に持ち続けているからだと感じました。

  • まだできて新しいのに、どこか懐かしい雰囲気が漂うお店、「イリガン珈琲店」。
    それは、お店を切り盛りする名切さんとお母様の「お客様に喜んでもらいたい」といういつも変わらない温かい想いが、珈琲やカレーの香りと一緒に店内を包んでいるからだと思 います。
    これからも変わらず、お客様を迎え続ける。きっと、思わず「ただいま」と言ってお店に 入りたくなるような、地元の方に愛される、そんなお店になっていくことでしょう。

text:中西絵里加/photo:CHIMASKI/December,2018

お店について

イリガン珈琲店

〒733-0011 広島県広島市西区横川町 1-6-20
TEL 080-9138-4946
定休日 水曜日
営業時間 10:00~17:00
http://irigancoffee.com/

卒業生の紹介

名切 弥月(なぎり みづき)
1990年広島県生まれ。京都造形芸術大学空間デザインコース卒業。卒業後は地元広島に戻り、町おこしのために家族で公園や園内のレストランを約3年間運営。その後、約半年 の時間をかけて準備を行い、2017年6月に「イリガン珈琲店」をオープン。大学で学んだスキルを活かして店内空間やディスプレイ、メニュー表やコースターなども自らデザインしながら、より美味しい珈琲をお客様に提供するために日々試行錯誤を続けている。

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